近年、クッキーレス化(※1)の進行により、オンオフ統合的な広告分析の重要度が増しています。従来のオンライン広告のターゲティングが困難になる一方、デジタルサイネージ広告やリテールメディア、コネクテッドTV(CTV)(※2) 広告などは、高度なターゲティング精度を維持しつつ、生活者に直接的にアプローチできる特長がある広告媒体が勢いを増しています。
クッキーレス化が進む中、広告主はオンオフ両方の広告効果を総合的に評価し、効果的なマーケティング戦略を展開する必要がありますが、多くの広告主がこの統合的な検証まで手が回っていないのが現状です。
この記事では、オンラインとオフラインの広告効果を統合的に分析する重要性を探り、広告主が今後どのように対応すべきかを考察します。
※1 「クッキーレス化」とは
ウェブブラウザで使用される「クッキー(cookie)」と呼ばれるデータの保存やトラッキングを行わないように規制すること。プライバシーの懸念や法規制の厳格化に伴い、クッキーレス化が進んでいる。
※2 コネクテッドTV(CTV)とは
インターネット接続機能を持つテレビ端末で、YouTubeや各種VODコンテンツが視聴可能。CTVへ表示される広告がCTV広告。
はじめに、デジタルサイネージ広告(ディスプレイやプロジェクターを利用した電子看板に表示される広告)の市場規模について見ていきましょう。
株式会社CARTA HOLDINGSと株式会社デジタルインファクトの調査によれば、2023年のデジタルサイネージ広告市場の規模は801億円に達し、前年比で119%増加。急速な成長がうかがえます。さらに、2027年に向けた予測では、2023年比で174%増の1,396億円に達する見通しとなっています。
コロナ禍の外出制限を経てもなお、市場全体としては十分成長しているといえます。街で目にする機会も多く、視覚的なインパクトによって多くの生活者の関心を寄せることができます。
また、デジタルサイネージ広告は、オンライン広告と連動させ、複数のプラットフォームを組み合わせて広告キャンペーンを展開することも可能です。これにより、広告主はオンオフの境界を越えて一貫性のあるメッセージを発信でき、市場拡大に向けたポテンシャルが更に高まっています
出典:CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト
CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト「デジタルサイネージ広告市場調査2023年」よりCARTA ZERO作成
次に、「リテールメディア広告」についても見てみましょう。
リテールメディアでは、店舗を持つ企業やEC事業者などの小売企業が店舗内にデジタルサイネージ広告、ECサイト内にオンライン広告を提供しています。 株式会社CARTA HOLDINGSと株式会社デジタルインファクトの調査によると、リテールメディア広告市場規模は、2023年に前年比122%増の3625億円、2027年には2023年比約2.6倍の9332億円規模に拡大するとされています。
出典:CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト
CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト「リテールメディア広告市場に関する調査」よりCARTA ZERO作成
なぜリテールメディア広告が伸びているのか?現在クッキーレス化が進んでいる中、ECサイトのオンライン広告や店舗内にあるデジタルサイネージ広告を含むリテールメディア広告はターゲティング精度が非常に高く、広告主が求めている層にアプローチできるため、ますますニーズが高まっています。
これまでオンライン広告を主軸に出稿していた広告主も、クッキーレス化に伴い、デジタルサイネージ広告やリテールメディア広告にも注目していく必要があります。オンオフの境目がない、時代に適した広告出稿と運用を考えていかなければなりません。
近年、NetflixやHulu、Prime Videoなどの動画配信サービスの普及により、エンタメコンテンツの楽しみ方に変化が見られます。
eMarketerの調査によると、米国でのCTVによる動画視聴者数は2022年には2億2300万人以上とされ、米国のデジタル動画広告費の3分の2以上をCTV広告が占めるとされています。
CTV広告は国内にも普及しています。SMN/AJA/デジタルインファクトの調査によると、2025年には1695億円に達することが予測されています。
SMN/AJA/デジタルインファクトより、CARTA ZERO作成
出典:SMN/AJA/デジタルインファクト「国内コネクテッドテレビ広告市場調査」
地上波テレビCMでは、あらかじめ決定した日時への広告露出出稿が基本でしたが、CTVは、視聴者の見たいタイミングで、Netflix、Hulu、Prime video、TVerなどのコンテンツを視聴できます。そのため、視聴意欲が高く、コンテンツに対して専念視聴がされている状態です。また、CTV広告では、細かなターゲティング設定の効果を見つつ、配信条件を変更しながらの広告出稿が可能です。
細かなターゲティングが可能な上に、ターゲットの視聴態度が良いCTVでは、テレビCMに比べ、より興味関心ファネル/購買ファネルへ近づけるためのリーチが狙えます。CARTA ZEROが提供するオンオフ統合分析が可能なアドプラットフォーム「PORTO」の調査によると、広告会社・広告代理店の約45%がCTV広告の実施または、実施検討をしていると回答。CTVの利用増加に伴い、広告を出稿する企業も増えることが予測されます。
クッキーレス化に伴い、オンラインのターゲティング環境が変化するため、オンオフの境がますます曖昧になります。広告主はそれに応じた総合的な広告戦略を検討していく必要があります。オンオフ一体化した広告配信と運用が求められる中、より統合的な分析が重要になるでしょう。
株式会社サイカ(※3)の調査によると、企業の広告宣伝担当者の約43%がオンライン広告とオフライン広告を分けて分析していると回答。また、今後取り組みたい分析として「オンライン広告・オフライン広告に加えて外部的な影響要因も含めて統合的に分析」が36.8%ありました。この結果から、オンオフ統合分析は求められているものの現状は不十分だと感じられていることが伺えます。
これまではオンライン広告が台頭していましたが、プログラマティックに分析が可能になったデジタルサイネージ広告やCTV広告が勢いをつけている時代において、オンオフ統合分析は必須になっていくでしょう。
※3 株式会社サイカ 『企業の広告宣伝担当者に聞いた、広告の効果測定方法に関するアンケート調査 2020年版』
先述の通り、統合的な広告配信とその分析の需要は近年高まっています。
そのニーズに応えるために、プラットフォーム会社では、オンライン・オフラインを問わず、その広告成果を一括で管理・分析できる仕組みを提供しています。
CARTA ZEROが提供するアドプラットフォーム「PORTO」では、各種フォーマット・メディアを駆使したオンオフ統合配信、その分析も可能です。
DSPでは、ディスプレイ広告やネイティブ広告などのデジタル広告を中心に配信を行うのが一般的ですが、PORTOでは、既存デジタルメディアの各種フォーマットはもちろん、デジタルサイネージ広告や音声広告、CTV広告を含むあらゆるメディアをプログラマティック化することで、それらへの一括配信、管理、レポーティングの実現を可能にしています。
PORTOの独自サービスにおける統合的な配信や分析の実例と、その仕組みをご紹介します。
・CTVへの広告配信
CTVへ広告を配信したときに取得できるデータ識別子(テレビデバイスID)は、ウェブブラウザやスマートフォンアプリに配信した際に取得できるデータ識別子(cookie、モバイル広告ID)とは異なっています。
そのため、従来はそれぞれに広告を配信し、いざ分析するという段階になると、同じユーザーが複数のメディアを跨いで利用していた場合など、正しい効果計測が困難であるという課題がありました。
そこでPORTO Analytics for CTVでは、調査会社モニタ、位置情報、サイト来訪などの情報を紐づけることで、広告の配信環境や広告主のコンバージョンポイントによって異なる識別子を一括で管理し、ログレベルでの効果分析を可能にしました。
すなわち、CTVだけでなく、他デバイス・フォーマットを横断し、オンライン・オフラインを問わずシームレスな分析ができます。
また、PORTOは、メディアごとに広告配信効果を可視化することで、CTVを含む広告キャンペーンにおけるPDCAサイクルを回すことも可能です。
CTV広告を含めた統合的な配信・計測が可能な環境の確保は、広告主にとって重要な課題となりそうです。
・デジタルサイネージ広告配信
ユーザーのデバイス上に表示させる広告に限らず、デジタルサイネージ等DOOHへの広告配信においても、PORTOならではの強みを発揮しています。
分析の側面では、調査会社様や各種データと連携することで、デモグラごとの接触リーチ数やサイトへのコンバージョン率、特定エリアへの来訪率など、従来の屋外型広告では成しえなかった広告接触後の効果検証が可能です。
さらに、その接触者データを抽出した上での他メディアへのリターゲット配信、実ログベースでの横断的な検証をすることも。
「オフラインメディアのプログラマティック化」「そのデータの他メディアへの展開」、まさにオンオフ統合プラットフォームならではのメリットです。
このように、PORTOではオンライン・オフラインを問わない統合的な配信・分析が可能です。メディアを限定せず幅広い選択肢を持つことで、広告主様の課題解決に最適なソリューションを提案します。さらに、広告配信KPIに合わせて配信方法や組み合わせを分析し、メディアを横断した戦略を立てることで、効果の最大化を目指すことができます。
冒頭でもお伝えしたクッキーレス化など、今後の環境の変化から見ても、PORTOのような統合プラットフォームの存在は、より重要度を増していくといえそうです。
PORTOでは、メディアのオンライン・オフラインを問わない統合的な配信・分析を軸に、今後とも広告主様のマーケティング活動を支援してまいります。
CTVへの広告配信を試してみたい、自社のKPIに沿って効果検証してみたい、他メディアとの統合オンオフ分析や計測をしてみたい、など、お気軽にCARTA ZEROまでご相談ください。
出典:
CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト「デジタルサイネージ広告市場調査2023年」
CARTA HOLDINGS/デジタルインファクト「リテールメディア広告市場に関する調査」
SMN/AJA/デジタルインファクト「国内コネクテッドテレビ広告市場調査」
PORTO「PORTO、コネクテッドTVに特化した広告ソリューション 「PORTO Analytics for CTV」 の提供を開始」
PORTO「コネクテッドTVへの広告配信について」