導入の課題から具体的なフローまで!エンジニア兼コンサルタントがクッキーレス時代を制するコンバージョン欠損対策の基本を解説
デジタルマーケティングで避けては通れないクッキーレス問題。そのクッキーレスに大きな影響を受けるとされるのが、コンバージョン計測です。本記事では、広告配信において大きなリスクとなり得る、クッキーレスによるコンバージョン欠損について、その問題点やコンバージョンAPIなど、注目の対策法についてCCIのエンジニア兼ソリューションコンサルタントが解説。
Meta社によるMeta Agency First Award2024で、「Best Solution Award – Conversions API部門」をCCI単独で受賞したコンバージョン欠損対策サービス/CAPIについても合わせてご紹介します。
※関連ページ|コンバージョン欠損対策(コンバージョンAPI)
※関連ページ|CCIがMeta主催の「Meta Agency First Awards 2024」にて、「Best Solution Award – Conversions API部門」を受賞
担当者紹介
鈴木 瑛子(すずき ようこ)
株式会社CARTA COMMUNICATIONS(CCI)
ソリューションディベロップメント・ディビジョン データ&ストラテジー部 エンジニア兼ソリューションコンサルタント
2010年に入社し、システム開発部門で3年間、自社の広告配信プラットフォームの要件定義を担当。その後、7年間にわたりオンプレミスサーバ・ネットワークのインフラエンジニアとして従事。
担当システムのサービス終了を機に、2021年よりビジネスサイドへ転身。エンジニアリングの枠にとどまらず、顧客に対する提案や向き合いを大切にしながらセールスやコンサルティング活動に取り組んでいる。
クッキーレス問題で注目されるコンバージョン欠損対策とは?
ーークッキーレスによって大きく影響を受けるとされるものにコンバージョン計測があります。クッキーが規制されることによってなぜコンバージョンに欠損が起こるのでしょうか。その理由や対策についてあらためて教えてください。
鈴木:
これまでコンバージョン計測は「タグ」と「クッキー」を使って行われてきました。クッキーは「ファーストパーティークッキー」と「サードパーティークッキー」の大きく2種類に分けられますが、「タグ」形式のコンバージョン計測ではその両方が使われています。
しかし、Apple社が2017年にプライバシー保護を目的にしたクッキー取得の規制を始めると、それを皮切りにして各ブラウザ事業社が続々とサードパーティクッキーを制限。現在までに、日本で使われている多くのブラウザでサードパーティークッキーが制限されることになりました。これにより、今まで当たり前だったサードパーティークッキーを活用したコンバージョン計測が困難になってしまったわけです。
サードパーティクッキーだけでなく、「タグ」形式で取得するファーストパーティークッキーに関しても問題が発生しています。発行方法次第ではありますが、保存期限が最短で24時間に短縮されてしまったのです。
これは、広告を見た後に24時間以上時間をかけてじっくり検索や比較検討をするようなユーザーについては、行動の計測ができなくなることを意味します。購入までの検討期間が長くなりがちな高額商品などにはこの影響が特に顕著であり、コンバージョンが正確に把握できなくなることで、結果的にコンバージョンデータを欠損してしまうというケースが頻発するのでは…と懸念されています。
Google Chromeによる“クッキー廃止の見直し”発表でも状況は変わらず?
鈴木:
余談になりますが、日本でブラウザシェア1位を誇るGoogle Chromeでもサードパーティクッキーの廃止が予定されていました。しかし一転して、今年7月に「サードパーティクッキーの非推奨化を断念する」とGoogleから発表があったため、「クッキーレス対応は急がなくてもよいのでは…」と考えるマーケティング担当の方も少なくないようです。実際に、そうしたお問い合わせは頻繁にいただいています。
ただ、ここで注意したいのは、Googleの発表が「サードパーティクッキー廃止の撤回」のみならず「ブラウザの利用者がサードパーティクッキーを使うかどうかを選べる機能の導入」にも合わせて言及していた点です。
参考になるのが、iOSのATT(App Tracking Transparency)の許諾率でしょう。ATTとは、アプリがiOSデバイスの広告識別子(IDFA)にアクセスすることと、ユーザーまたはデバイスの計測に許可を求めるポップアップ表示がされるユーザープライバシー機能ですが、導入以降、日本での許諾率はわずか16%前後にとどまっています。
実に8割以上のユーザーが、自身のデータ計測にネガティブな反応を示しているということをふまえれば、「サードパーティクッキーを使う」ことを許諾するユーザーも同様に少数であることが予想されます。
こうした状況を鑑みれば、企業の皆さまは、やはり早めにサードパーティクッキーに依存しないコンバージョン計測の仕組みを導入する必要があるというわけです。
これからのコンバージョン計測はどうなっていく?
ーーでは「クッキー」に依存しないコンバージョン計測は、どのように実現すればよいのでしょうか?
鈴木:
ポイントは「ファーストパーティデータの活用」と「コンバージョンAPIの導入」になると思います。
ファーストパーティデータの活用
クッキーレス環境下のコンバージョン計測ではまず、クライアント企業が直接収集したファーストパーティーデータを活用して、コンバージョン計測の精度を担保する手法が一般的です。
ユーザーの許諾を得た上で、申込フォームなどからメールアドレスや電話番号などの個人情報を広告プラットフォームに送信し、広告プラットフォームが持つユーザーデータと突合することで、クッキーに依存せずとも高精度の計測が実現できます。
さらにコンバージョン計測においては、クッキーだけでなく、広告をクリックした際に発行されるユニークなパラメータが重要な役割を果たしているという点も大事なポイントです。たとえばGoogleでの「GCLID」やFacebookでの「fbclid」といったクリックIDが有名だと思います。
これらのパラメータを活用することで、ユーザーが広告を通じてどのようなアクションを起こしたのかについて正確に追跡することが可能になります。これにより、広告効果の詳細な分析ができるようになるので、得られたデータをもとにマーケティング戦略の最適化や予算配分を行い、より高い成果を得るための改善が可能になります。
このように便利なパラメータですが、前述のとおり各種クッキー規制の影響を受けずに使用する手立てが必要です。コンバージョンAPIを導入する事で、このパラメータを「サーバから発行されるクッキー」として利用できるようになります。
これによってクッキー規制の影響を受けづらく削除されにくいという特徴があり、「検討期間が長い商材を比較検討するお客様行動」においても、正確なコンバージョン計測が実現できます。
コンバージョンAPIでは、従来のパラメータに加えて、サーバー発行のクッキーやメールアドレスなどの情報を送信し、広告プラットフォーム側のユーザーデータと照合することで、コンバージョン計測の精度を向上させます。個人情報は必須ではありませんが、使用することで精度の向上が期待できます。
コンバージョンAPIの導入
コンバージョン欠損対策の対応方法は大きく2つに分類されます。
1つはコンバージョンAPIを使用したサーバー計測環境を構築する方法、もう1つは詳細マッチングやアドバンスドマッチングと呼ばれるユーザーの許諾のもとでPII(Personal Identifiable Information)を送信できるようにタグを設定する方法です。
後者は広告プラットフォーム毎に呼称が異なっていて混乱を招くことから、弊社では「Advanced Tagging」と総称しています。
いずれの方法も、計測イベント情報とそれに紐づくユーザー識別情報をコンバージョンシグナルとして広告プラットフォームに送信しますが、このなかのユーザー識別情報にメールアドレスや電話番号等のPIIを多く含めることで、広告プラットフォームが保有するユーザーデータとの突合精度が向上し、より高い欠損対策効果が期待できます。
また、コンバージョンAPIのカスタムパラメータにコンバージョンの価値(e.g. 商品価格や合計決済金額)や機械学習を用いて算出したLTV(Life Time Value)の予測値を付与することも、広告効果改善には効果的です。
弊社のベストプラクティスとしては、広告プラットフォームに送信するシグナルデータの量とシグナルデータに含めるユーザー識別情報のバリエーションを拡大する目的で、弊社ではAdvanced TaggingとコンバージョンAPIの併用をお薦めしています。
これら両方を併用することで広告最適化機能の精度向上が期待できますが、お客様の計測環境によっては併用が難しいケースもありますので、まずはお客様の計測環境をお伺いさせていただき、お客様の環境に応じた最適な提案をさせていただければと思います。
導入は必須…? コンバージョンAPIの導入メリットとは
ーーコンバージョンAPIが注目されている理由にはどんなことがあるのでしょうか?
鈴木:
コンバージョン欠損対策に向けたソリューション導入は、今や当たり前になりつつあるように感じています。そのメリットは大きく2つです。
1つ目は、コンバージョンデータの欠損が従来の方式と比較して少なく、より多くの数値を広告プラットフォームに送ることができるので、コンバージョン計測の正確性が増し、各メディアのパフォーマンスを正しく把握できるという点。
2つ目は、これまで取りこぼしていたコンバージョンについて計測できるようになるので、コンバージョンの獲得数が増える点です。分母が増えれば、広告プラットフォームの機械学習も進むので、広告配信の最適化精度は向上します。
実際、この対策を導入したことでCPA(顧客獲得単価)が下がったという事例も見られます。特に獲得系商材を扱うクライアント様には、ぜひ導入していただきたい重要なソリューションだといえるでしょう。
膨大なタスクがハードルにもなり得る?コンバージョンAPIの導入フローを解説
ーーコンバージョンAPIの導入に向けてデジタル担当者は何をしなければならないのでしょうか?
鈴木:
コンバージョンAPIを導入するには、外部ツールを使う方法、あるいは自社内の環境上に構築する方法が考えられます。
外部ツールを使う方法
外部ツールの提供を受けるパターンにおいては、提供価格面での優位性に目が行きがちですが、こうしたサービスの多くは、基本的にはマニュアルを見ながらデジタル担当者自らがすべて作業しないといけないという点は注意しておきたいところです。
システムに関するリテラシーと作業リソースについては、あらかじめ算段しておく必要があるでしょう。
自社内の環境上に構築する方法
一方で自社内の環境上に構築する場合、様々な実装方法が考えられます。
その内のひとつ、たとえばサーバーサイド型Googleタグマネージャー(以下、サーバーサイドGTM)でコンバージョンAPIを実装する方式においては、コンバージョンAPIの知見だけではなく、DNS設定やGoogle Cloud環境の構築/監視/運用/保守に関する知見についても必要になります。社内にエンジニアが居ない企業にとっては少し導入ハードルが高く思われるかもしれません。
さらに、実際にコンバージョンAPIを導入するには、上申に向けた要件整理や資料作成、関連する法規制への準備作業なども必要となるなど、社内外の様々なステークホルダーに向けた対応が発生します。具体的には、導入までに「事前整理」「要件定義・見積もり」「実装」「試験」のフェーズがあると考えておくとよいでしょう。
「事前整理」とは、自社のデータ収集環境や、クッキーレスにおける影響範囲の把握、プライバシーポリシー整備など、導入に向けた自社コンディションの確認作業です。
続く「要件定義・見積もり」は、コンバージョンポイントや媒体数を確認の上、様々存在する実装方式からの選定、それに応じた予算の捻出を進めるフェーズです。
それが揃って初めてコンバージョンAPIを実装することができます。
「実装」を完了させたのち、適切にコンバージョンAPI経由でコンバージョンが計測できることを確認しする「試験」フェーズに移行します。
このようにコンバージョンAPIの導入は一朝一夕に実施できるものではなく、自社だけですすめることが難しいとご相談をいただくケースが多くあります。
こうした顧客課題に対応すべく、CCI/DataDigでは「事前整理」「要件定義・見積もり」「実装」「試験」まで、全てのフェーズを一貫してサポートしております。コンバージョンAPIの導入に不安や課題を感じたら、ぜひ一度ご相談をいただければと思います。
デジマ担当者を包括的にフォロー!DataDigのコンバージョンAPI導入サービスを紹介
ーーなるほど。ではCCI/DataDigのコンバージョンAPI導入サービスの強みは、どのような点にあるのでしょうか。
鈴木:
前述のとおり、DataDigでは、経験豊富なデータエンジニアとデータプランナーが、現状のヒアリングから実装、さらにコンバージョンAPIの導入後の具体的な広告パフォーマンスの最適化まで、先述した各フェーズを一気通貫でフォローできるコンバージョン欠損対策サービスを提供しています。
本サービスは、自社環境内にコンバージョンAPIを導入するためのサポートを行っており、一番の特長は、ツール提供サービスのようにマニュアル化されていない、各社のコンディションに応じたきめ細かな対応を、あらゆる領域でサポートできる点にあると思います。
イベントデータの取得方法や環境に応じて、最適な形式でコンバージョン計測環境の提供はもちろんですが、上申の際のプレゼンテーション資料の作成、プライバシーポリシーの策定、ISO監査に向けたサポートやシステム管理を行うベンダーへの指示書の作成やベンダーとのミーティング参加まで、状況に応じた臨機応変な対応で、顧客のコンバージョンAPI導入をサポートしていきます。
様々なクライアントのお話を聞いていて強く感じるのは、各社のデジタルマーケティング担当者が往々にして多忙を極めていることです。
デジタルマーケティング業界の激しい変化への対応に奔走されている皆さんの力強いパートナーを目指して、DataDigはデータ活用と基盤構築の分野に特化し、データ仕様の設計からAPIの実装、配信設計の提案まで一気通貫で支援する専門家集団です。今回ご紹介したようなコンバージョンAPIの導入について、今お悩みを抱えている方がいらっしゃれば、ぜひ一度お気軽にご相談をいただければ幸いです。
Data Digについて
CCIでは、クッキーレス時代における企業のデータマーケティングにおける課題や悩みに対して、データ計測・収集から具体的な活用支援、さらに必要なソリューションの導入・開発まで一気通貫で対応したData Digを2021年から提供を開始しております。
各種専門知識を持った担当者が、お客様ごとに異なる課題を見極めた上で最適なデータ活用を支援しております。
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