ファーストパーティーデータの活用方法は、コンバージョン欠損対策だけではない… DataDigからリリースされた新サービス「事業成果CV最適化」の内容は?
クッキー規制の対策を機に、その存在感を増しているファーストパーティーデータ。うまく活用すれば、サードパーティークッキーに頼ることなく、コンバージョン計測におけるクッキー依存を脱却する施策として期待されています。
一方で、ファーストパーティーデータには、クッキーレスによる広告配信の精度を維持・向上するだけでなく、さらに自社マーケティングを加速化させるためのトリガーとしても活用され始めているといいます。
今回は、ファーストパーディーデータを活用したマーケティング施策のひとつ「事業成果CV最適化」について、CCIのデータプランナーに話を聞きました。
※事業成果CV最適化に関する資料ダウンロードはこちら
担当者紹介
椎名 文彦(しいな ふみひこ)
株式会社CARTA COMMUNICATIONS(CCI)
第1メディアビジネス・ディビジョン Google部 兼 ソリューションディベロップメント・ディビジョン データ&ストラテジー部
- 2014年~:株式会社サイバー・コミュニケーションズ入社(現CARTA COMMUNICATIONS)。DSPをはじめGoogle、Yahoo!等、運用型広告コンサルタント業務に従事。
- 2021年7月~:クッキーに依存しない新たなデジタルマーケティングの提供を目的としたCCIオリジナルのサービス『DataDig』のデータプランナーとして、主にデータクリーンルームを活用したサービス開発、分析業務を担当。
- 2024年1月~:Googleソリューションを用いたサービス開発・導入支援を担当。
Googleによるサードパーティデータ全面廃止の撤回でクッキー規制の対策はどうなる?
ーーまず、クッキーレスについての現状から教えてください。
Google社がサードパーティクッキーの仕組みを廃止するとしていたこれまでの方針を、撤回することを2024年7月22日に発表しました。この影響により、クッキー規制の対策には先延ばしの猶予が生まれたと考えられるのでしょうか?
椎名:
2025年初頭に予定していた“Chromeにおけるサードパーティークッキーの廃止”は中止されたものの、今後「ユーザー側で選択できる機能」を導入すると方針が示されていることから、クッキー利用になにかしら制限がかかることが想定されます。
アップルがITPをリリースした2017年を皮切りに、各国でのプライバシー保護に対する気運の高まりに応えるかたちで実施されたブラウザ事業各社による一連の規制ですが、Google以外の主要ブラウザにおいては、現在までにクッキーの廃止や制限がすでに進められている状況です。
これらをふまえると、クッキーを最大限活用することが難しい状況に変わりはないため、今回のGoogleの発表によって、先延ばしできる状況になるのは考えにくく、今後もその検討・対策は引き続き重要であると考えられますね。
クッキー規制で注目されるファーストパーティーデータについて解説
ーークッキー規制の対策として、ファーストパーティーデータの活用が活性化していますが、まずはファーストパーティーデータとは何なのか、またクッキーレスに対してどのように有効なのかをあらためて教えてください。
椎名:
ファーストパーティーデータとは、企業がWebサイトなど自社のチャネルを通して、直接収集したデータの総称です。たとえば、自社の会員データや購買データなどがこれにあたり、主にCRMツール等で取得されています。
※参照:Data Digコラムリンク|ファーストパーティーデータとは?クッキーレスで注目されるファーストパーティーデータの特徴と活用事例を紹介
ファーストパーティデータにより、クッキー規制下の広告配信に懸念されるリスクの解消が期待できるわけですが、そのリスクと解消ポイントは大きく分けて3つあります。「ターゲティング」と「効果測定」、そして「配信最適化」です。
※参照:「クッキーレスがマーケティングに及ぼす影響と対策。データプランナーに教わるクッキーレス[後編]」
ターゲティング
まず、ターゲティングのリスクです。従来のターゲティング配信ではサードパーティークッキーが使用されていたため、クッキーレスによりパーソナライズ化された配信がしにくくなるという問題があります。それにより興味や関連性の低い人に広告があたり、効果が悪くなる可能性があります。
このターゲティング悪化のリスクを、広告主企業が直接収集したファーストパーティデータを活用することで解消できます。
具体的には、GoogleやYahooの広告管理画面上に、ユーザーのメールアドレスや電話番号といったファーストパーティーデータをハッシュ化した状態で入稿し、配信する「カスタマーマッチ配信」を用います。これにより、これまでサードパーティクッキーを必要としていたユーザーの類似拡張配信や、配信除外も行うようなことが、ファーストパーティを使うことで実現できます。
効果測定
続いて、効果測定のリスクです。クッキーの規制により広告の計測・コンバージョン件数や成果が追いにくくなる問題があります。
この効果測定への影響も、ファーストパーティーデータを活用することで、クッキーに依存することなく成果を計測できます。
これは「コンバージョン欠損対策」といわれています。コンバージョンユーザーのメールアドレスや電話番号などのファーストパーティーデータをプラットフォーマー側に送り込み、広告プラットフォームが保有するユーザーデータと照合してコンバージョン計測を行うことで、計測精度の維持・パフォーマンス向上を補完するものです。
※参照:Data Digサイトリンク|コンバージョン欠損対策
配信最適化
最後に「配信最適化」のリスクです。さきほど述べた通り、クッキー規制によりコンバージョン等のデータが取得しにくくなるため、それらのデータを基にした広告プラットフォーム側の配信最適化(コンバージョン最大化など)が機能しづらくなる可能性が出てくるという問題があります。
これは先ほどの効果測定の問題を解決することで、最適化の問題も解消することが可能だといえるでしょう。
さらに「配信最適化」に関しては、ファーストパーティーデータの活用によってクッキーレス以前に主流だったWebコンバージョンをベースにしたそれよりも、さらに深い地点での成果を基準として最適化促進することも期待できます。
この点においては、広告配信領域でのファーストパーティーデータの活用は、クッキーレスの補完だけでなく、さらなる進化を促したといえるかもしれません。
我々DataDigも新しいサービスとして「事業成果CV最適化」をリリースしました。
※参照:CCI、Google広告において事業成果に基づく精緻なコンバージョンデータにより機械学習機能を最大化ファーストパーティーデータの利活用で、事業成果CVの最適化を実現?
ーー「事業成果CV最適化」とは、具体的にどのようなものでしょうか?
椎名:
現在のデジタル広告においては、WebコンバージョンをKPIとして最適化する運用が主流です。たとえばフィットネスクラブの場合、Webサイト上での「見学」や「体験申込」をKPIとして評価・運用がされています。
しかし、これは事業活動における成果地点には至っておりません。実際には、Web上での「体験申込」の後に、「体験」「入会」といったフェーズが続くわけで、ここでいえばユーザーの「入会」といった事業成果に焦点を当て、広告効果の評価基準を設ける必要があると考えました。
事実、我々はこれまでに多くの広告配信案件をサポートしてきましたが、Web上のコンバージョンから事業成果のコンバージョンに至るまでの転換率が悪いという課題も少なからず見受けられました。「事業成果CV最適化」は、こうした転換率を改善し、本来の目的である事業成果に至るユーザーを呼び込む為に広告配信を最適化するサービスです。
ただ、オンライン上の広告計測タグで得た数値を基に評価を行うこれまでのデジタル広告の仕組みにおいては、広告プラットフォーマー側が成果地点として計測する「申し込み」や「資料請求」といったWebデータ(下図左)と、それ以降のフェーズで企業側が取得したファーストパーディーデータ(下図右)とが、それぞれの性質や管理方法の違いから連携が複雑であり、事業成果ポイントをコンバージョンデータとして広告管理画面に連携することは困難でした。
しかし、クッキーレスの問題以降、広告配信を目的としてファーストパーティデータの整備が企業側で進んだことを背景に、オン・オフラインのデータ連携のハードルは、かつてほど高くなくなりました。
これによって、事業成果CV最適化に向けたサービスが作りやすい条件が揃ったことも、今回のサービス開発が実現した要因のひとつだといえるでしょう。
DataDigがスタートした「事業成果CV最適化」の内容は?
ーーでは、DataDigのサービス「事業成果CV最適化」では、どのようにして事業成果のコンバージョンを計測しているのでしょうか。具体的な方法を教えてください。
椎名:
事業主様とテスト実施を行った際の事例で説明します。
ユーザー向けにとあるサブスクリプション型サービスの提供を行っているこちらの事業主様は、従来サービスのお試し期間となる「仮登録(無償契約)」をWeb上のコンバージョンポイントとし、その後、本来の月額課金が発生する「本登録(有償契約)」を成果地点としていましたが、この「仮登録(無償契約)」から「本登録(有償契約)」への引き上げ率の低さが課題となっていました。
この課題を受け、「仮登録」だけでなく「本登録」につながるユーザーを呼び込んでいく、広告最適化施策を検討していきました。
具体的には「本登録」に至った情報をコンバージョンデータとして広告管理画面に連携、最適化に活用する座組となります。最適化を促進してくため、「本登録」に至った情報は、デイリーでGoogle広告管理画面に自動連携する基盤を構築した事例です。
このように「お試し期間を経て、本申し込みにたどり着いたか」のデータを広告プラットフォーム側に送り込むことで、「サービスの本登録」という成果地点に向けた広告配信の最適化を図ることができるようになります。
これらの施策を経て、Google広告においては事業成果ポイントである「本登録(有償契約)」獲得のCPAが最大27%も改善できました。
この結果からも、従来のように「仮登録(無償契約)」というWebコンバージョンをKPIに設定して最適化をかけていくよりも、さらに深い地点の事業成果である「本登録(有償契約)」をベースに最適化をかけてくことのほうが有効であることが理解いただけると思います。
これからの企業活動を見据え、ファーストパーティーデータの整備はまったなしの状況…企業は何から始めるべき?
ーー本来の事業成果ポイントではなく、Web上のコンバージョンポイントをKPIに設定してしまっている…という課題は、さまざまな業種・業態に当てはまりそうですね。
椎名:
そうですね。最近、BtoB系企業からの問い合わせや資料ダウンロードを求めてるというお客様で「Webコンバージョンの質が良くない」という話がありました。
多様なユーザーからの問い合わせがある資料請求においては、自社事業との親和性が薄く、ビジネスとしての発展が期待できない請求の場合でも、Web上ではコンバージョンとして1カウントされてしまいます。「きちんと自社事業にマッチする顧客からのコンバージョンを精査するのが課題」ということは、まさにこれも事業KPIの最適化で解決できる話なのではないかと思います。
「Webコンバージョンの質」を気にされているのであれば、おそらく事業成果のコンバージョンもトラッキングしているはず。広告配信がきちんと成果につながっているのか、Webコンバージョンから事業成果までの転換率に課題をお持ちの企業がいらっしゃれば、そのデータを可視化するのはもちろん、さらに精緻なコンバージョンデータとして広告最適化にも活用することが可能で、業種・業態問わずに利用いただけるサービスなのかなとは思います。
少し想像してみるだけでも、先ほどのフィットネスクラブ以外にも、サブスクリプションサービスにおける最初の無料会員登録から有償利用への転換であったり、健康食品であれば、初回限定のお試し購入から継続利用への転換であったりと、本サービスと相性のよい事業は少なくないのではないでしょうか。
ーー「コンバージョン欠損対策」という守りの施策にはもちろん、ファーストパーティーデータは、自社マーケティングを活性化するための積極的な活用も想定しておくべきかもしれませんね。では、ファーストパーティーデータの整備に向けて、企業はまず何に取り組めばよいのでしょうか。
椎名:
プライバシーポリシーの改訂からデータ統合など、実際のタスクは多岐に及びますが、ファーストパーティーデータの整備から導入までDataDigがサポートしながら伴走することも可能です。
また、ファーストパーティーデータを活用するためには、複雑な基盤構築が必要というイメージを持たれるかもしれませんが、DataDigの事業成果CV最適化のサービスには必ずしも必要ではありません。シンプルに広告効果最大化を目的とした企業様向けに、数か月でご提供できるようなサービスになっていますので、ぜひお気軽にご相談をいただければと思います。
Data Digについて
CCIでは、クッキーレス時代における企業のデータマーケティングにおける課題や悩みに対して、データ計測・収集から具体的な活用支援、さらに必要なソリューションの導入・開発まで一気通貫で対応したData Digを2021年から提供を開始しております。
各種専門知識を持った担当者が、お客様ごとに異なる課題を見極めた上で最適なデータ活用を支援しております。
ご興味のある方はぜひお問い合わせください!
また、Data Digコラムではクッキーレスに関する最新の対策やトレンド情報を随時発信しておりますので、以下の関連記事リンクより是非ご覧ください。
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