-2024年7月更新- クッキーとは?なぜ廃止される?データプランナーに教わるクッキーレス[前編]
※本記事は前編/後編に分かれています。
【前編】クッキーとは?なぜ廃止される?★本記事
【後編】クッキーレスがマーケティングに及ぼす影響と対策
今更聞けない、クッキーレスのこと
インターネットの世界では、情報を収集してユーザーの行動を追跡するための手段として"クッキー"が利用されてきました。
しかし近年、プライバシー保護の要求と規制強化によりクッキーレス(Cookieless)の時代を迎えつつあります。
この動きがマーケティングに影響を及ぼすことは知っているものの、実は詳しく知らない・今更人に聞けない・対策がわからず動けていない方もいるのではないでしょうか。
今回、クッキーレス初心者である筆者が「クッキーレスとは?」「マーケティングへの影響と対策」について、データプランナーに聞いていきます。
▼この記事はこんな方におススメです。
- クッキーレス対策がまだの方
- クッキーの基礎から知りたい方
- 新任WEBマーケターの方
担当者紹介
三代 一豪 (みよ かずひろ)
株式会社CARTA COMMUNICATIONS(CCI)
ソリューションディベロップメント・ディビジョン
Data Dig部 部長
- 2009年に株式会社サイバー・コミュニケーションズ入社(現CARTA COMMUNICATIONS)。
- 大手専業代理店、大手総合代理店に常駐/出向してメディアプランナー/データプランナーの担当に従事。
- 2022年1月よりクッキーレスに対応したデータ統合支援・活用サービス「Data Dig」の提供および事業責任者を担当。
司会:
本日はよろしくお願いします!
クッキーレスってそもそもなんでしたっけ?といった基本の部分も含めてお聞きできればと思います。
三代:
よろしくお願いします。初心者の方でもわかるよう、できるだけ分かりやすくお伝えしますね。
クッキーレスが今話題の理由
司会:
まず「クッキーレス」のワードは結構前から耳にしていますが、クッキーレス=クッキーが無くなるということですよね。なぜ今、ここまで話題になっているのでしょうか?
三代:
簡潔にお伝えすると今当たり前に行っているデジタルマーケティングが、これまで通りにできなくなるためです。
実は6年前くらいからクッキーレスの動きは始まっていて、既に広告主やマーケターの皆様は何らかの影響を受けている状態です。
既にChrome以外の各ブラウザによる規制が行われていて、現在クッキーの5割ぐらいに影響があります。
残るChromeに関しては、完全廃止には至らない可能性があるもののブラウザ利用者がCookieの利用を管理・制限をかける影響で、Cookieの利用許諾者は減少していく想定です。
▼日本で利用されるブラウザでCookieレス規制される割合
現在すでにCookie規制されている領域は、WEBブラウザのピンク色
廃止スケジュール
三代:
廃止スケジュールに関しては明確な日程が名言されていないため、広告主・代理店・媒体社・デジタル関係者は早急に対策をした上でクッキーレス時代を迎える必要があります。
【補足】
Google Chromeのデータプライバシー対策の方針転換が、Privacy Sandbox VP, Anthony Chavez氏より発表(2024年7月22日)されました。2025年に予定されていたサードパーティクッキーの完全廃止を行わず、ユーザーに対してOpt-in/Opt-outの選択肢を提供する方針であるとされています。
引用:Data Dig|Google Chorme サードパーティクッキー廃止を撤回.2024-7-23.(引用日2024-7-24)
司会:
クッキーレスによって今当たり前に行っているデジタルマーケティングが、これまで通りにできなくなる時代が迫っていて、そのときに備えて対策をしておく必要があるということですね。
クッキーとは?なぜ重要?
司会:
改めてクッキーレス対策が重要な理由を、そもそも「クッキー」とは何か?というところから教えてください。
クッキーとは何か
三代:
まず、クッキーというのはユーザーを判別する会員証や証明証だと思っていただければと思います。
例えば、普段インターネット上で様々なメディアやWebサイトを見ているときに、なんとなく趣味嗜好や属性に合った広告が出ていると思いませんか?女性だったら化粧品の広告、男性だったら男性のファッションに関連する広告が出てくるなど。
司会:
ターゲティング広告ですね!
三代:
そうです。ターゲティング広告は多くの場合、クッキーを使った技術の恩恵を受けています。
これはユーザーが様々なサイトに訪れた際の閲覧情報や広告をクリックした際の情報から、識別子としてユーザー情報を保存しておくような仕組みがあるためです。
その固有の情報が記録されたものがクッキーです。
もしクッキーがなければ、本来得られるはずの有益な情報を得ることができず、自分に関係の無い・興味の無い広告ばかりが出てしまうことになります。
司会:
それはユーザーや広告を出す側の企業にとっても望ましくないですね...だから対策が重要なのですね。
クッキーの歴史
司会:
今や広告で当たり前に使われているクッキーですが、いつ・なぜ登場したのでしょうか?
三代:
インターネットが家庭に普及しはじめた1990年代中頃から技術としては既に存在をしていました。
当時のウェブサイトは、ユーザーが新しくページを読み込むたびに初めて訪問したユーザーとして扱われていました。つまり、会員サイトへのログインも毎回IDとパスワードを手入力で行わなくてはならず、オンラインショッピング中にカートに入れた商品を記憶しておくこともできなかったのです。。
司会:
それは不便ですね...クッキーがある時代に生まれてよかったです。
三代:
今では考えられないですよね。
その解決策として、ユーザーの利便性向上を目的に閲覧者の端末とウェブサイトとの間でテキストファイルをやりとりして訪問者の記録を保存するCookieが開発されたのです。
これによって、ウェブサイトの利便性が格段に上がりました。
司会:
なるほど。クッキーは最初にユーザーの利便性を上げるために登場して、後に広告利用されるようになっていったということですね。
でもそのクッキーが無くなるという事は、昔のように会員サイトへのログイン時に毎回IDを入れるようになってしまうのでしょうか?
三代:
クッキーには種類があって、会員サイトのログイン時に使うようなクッキーには影響ありません。
これから段階的に無効化されるのは「サードパーティクッキー」という種類のクッキーです。
それぞれの種類について、説明しますね。
クッキーの種類(1st Party / 3rd Party)
三代:
クッキーの種類は、ファーストパーティクッキー(1st Party Cookie)とサードパーティクッキー(3rd Party Cookie)に分かれています。
2つの違いは「誰が」Cookieを発行しているかです。
ファーストパーティクッキー(1st Party Cookie)
ファーストパーティクッキーとは、訪問したサイトのドメインサーバーが発行しているクッキーのことです。
簡単にいうと、誰が発行しているのかがわかる種別のクッキーとなります。
具体例では、自社サイトへのログイン情報の記録や、ショッピングカートの保存など、サイト内の記録がファーストパーティクッキーにあたります。
仕組み的には、図のようにユーザーとサイト事業者間の1対1の関係になっています。
図のサイトAに訪問したら、サイトAのクッキーがブラウザに保存され、サイトAのサーバーと情報をやり取りします。サイトBに訪問したら、同じようにサイトBのサーバーと情報をやり取りします。
サイトAとサイトBの間で情報が連携することはありません。
サードパーティクッキー(3rd Party Cookie)
今回のクッキー規制で利用が難しくなるのがサードパーティクッキーです。サードパーティクッキーはユーザーが訪問したサイトとは別の“第三者“のサーバーが発行したクッキーで、1対Nの関係になってきます。
先ほど説明したターゲティング広告やリターゲティング広告に使われているのが、サードパーティクッキーです。
図のように、閲覧サイトAの裏側で実は別のサーバーXが情報を連携しクッキーXを発行します。
※主に広告配信事業者やDMP事業者のサーバーから発行されるケースが多いです。
司会:
サーバーXは第三者なのに、なぜサイトAの情報を取得できるのでしょうか?
三代:
サイトAの運営者が、サーバーXのタグをサイトに設置すると取得できるようになっています。
司会:
なるほど。サイトAにとってはサーバーXのタグを設置することで、ユーザーにパーソナライズ化した広告配信ができるといったメリットがあるのですね。
一方でユーザー視点で見ると、普段利用しているサイトの規約にクッキーの扱いについて記載されていたとしても、様々なサイトで自分に関連した広告が出ることに違和感を感じる人がいるかもしれません。
サードパーティクッキーはなぜ廃止される?
司会:
サードパーティクッキーが段階的に廃止されている理由は何でしょうか?
規制の強化
三代:
プライバシーに関する規制の強化とテクノロジーの規制が大きな理由です。
欧米では個人情報の取り扱いにおいて「ユーザーファーストの視点で個人情報とプライバシー保護の強化」を目的とした法律が出てきました。それが、GDPRやCCPAに代表する法規制です。
日本においても、2022年の4月に改正・個人情報保護法が施行されました。
また、同時並行でテクノロジー事業者(アップル社/グーグル社など)においても、情報のトラッキング(ユーザーを追跡・分析する)に制限や廃止に向けて動くようになりました。
これが今回のクッキーレスになるベースとなる背景です。
参考:個人情報保護委員会“ EU(外国制度)“.“ 外国制度(アメリカ合衆国)“.
コンセントマネジメントプラットフォーム(CMP)
司会:
サイトやアプリに利用する際に、同意のポップアップバナーが出るサービスが増えたのも、プライバシー規制の流れがあるからでしょうか。
三代:
そうですね。
改正個人情報保護法によりユーザーデータの取得・利用、補完・管理、提供、開示請求への対応がより明確化されているため、利用が進んできた背景があります。
同意バナーは、コンセントマネジメントプラットフォーム(CMP)というツールが使われています。
現状は企業ごとの裁量で導入するもので、導入必須ではないのですが、ユーザーの「勝手に個人情報を使われてるのでは?」のような不安や有事に際し、きちんと対応できるようにする状態にしておく必要があります。
そのため、CMPツールを使ってデータを管理する企業が増えています。
関連リンク|Data Dig”【クッキーレス 解説】対策・ソリューションまとめ ~データ収集・統合・同意取得編~|CMPツール/同意取得”.2023.12.20(引用 2024.4.30).
司会:
ありがとうございます。クッキーレスについての基本的な部分や背景を知ることができました。
クッキーレスによりユーザーのプライバシー保護は強化されていきますが、一方でユーザーと企業への影響はどんな事があるのでしょうか?
次の記事でクッキーレスが及ぼす影響と対策について、お聞きしていきます。
- クッキーレスがマーケティングに及ぼす影響
- 対策
- 優先すべき対応
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